近鉄の四神ライナーに乗ってきた

近畿日本鉄道(近鉄)の特急「四神ライナー」をご存知でしょうか?前回紹介したあをによしやしまかぜは有名ですが、四神ライナーはそこまで大々的なニュースにはなっていません。

今回は前回に引き続き歴史系ではありませんが、四神ライナーを紹介したいと思います。

四神ライナーとは?

四神ライナー(しじんライナー)は近鉄南大阪線・吉野線を走るさくらライナーという車両をラッピング・内装変更したものです。2026年に「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産に登録されるように応援するために誕生した列車です(晴れて世界遺産にも登録されました)。

ラッピング・内装変更で四神や飛鳥・藤原の歴史遺産があしらわれたデザインになっています。

なお、正式名称は「飛鳥・藤原 四神ライナー」ですが、本記事では「四神ライナー」と表記します。

どこを走っている?

四神ライナーが走っているのは、近鉄南大阪線と吉野線です。具体的には大阪阿部野橋~吉野間です。どの四神ライナーに乗っても、この区間を走ります(途中駅までや途中駅からということは無い)。

あをによしとは異なり、日によって運行時間が変わります。元々さくらライナーなので、従来さくらライナーが走っていた運行ダイヤの内の一部が四神ライナーになっています。どの運行ダイヤに四神ライナーが当たるかが日によって変わります。

各日の運行ダイヤは近鉄のホームページで公開されているので、狙って乗ることができます。ただ、朝早くや夕方以降の時間が多いので、少し狙いにくいかもしれません。

四神ライナーが走る路線の内、南大阪線は阿部野橋~橿原神宮前、吉野線は橿原神宮前~吉野を指します。

南大阪線・吉野線はともに線路幅が近鉄の他の主要路線とは異なります。奈良線・大阪線・名古屋線・京都線等は線路幅が新幹線と同じ標準軌と呼ばれるものです。

これに対し、南大阪線・吉野線やそこから分岐する長野線等は狭軌と呼ばれる、JR在来線と同じ線路幅です。標準軌よりも少し狭いものです。

南大阪線・吉野線の境目になるのは橿原神宮前駅ですが、この駅からは京都・奈良方面に向かって橿原線が出ています。この橿原線は標準軌のため、南大阪線・吉野線から京都・奈良方面への直通列車は運行できません。ただ、標準軌と狭軌の両方を走ることができる列車(フリーゲージトレイン)の開発推進が、以前に近鉄から発表されています。

南大阪線・吉野線の歴史

・南大阪線

南大阪線は近鉄の前身会社の一つである河陽鉄道によって、明治31(1898)年に柏原~古市間と古市~富田林間が相次いで開業したのが始まりです。現在の近鉄の路線の中で最古の路線がここです。ただし、現在は柏原~富田林間の内、柏原~道明寺間が道明寺線、道明寺~古市間(僅か1駅間)が南大阪線、古市~富田林間が長野線となっています。

南大阪線は長いですが、南大阪線の中での最古路線区間は僅か1駅間で、他は現在は別路線となっています。

河陽鉄道の事業は明治32(1899)年に河南鉄道に引き継がれ、大正8(1919)年に河南鉄道は大阪鉄道に商号変更しました。その大阪鉄道によって、大正11(1922)年に道明寺~布忍間が開通しました。翌12年には布忍~大阪天王寺(後の大阪阿部野橋)間が開通しました。

昭和4(1929)年、大阪鉄道は古市~久米寺(現在の橿原神宮前)間を開通させました。この開通と同時に吉野鉄道への乗入れを開始し、大阪阿部野橋~吉野間の直通運転が始まりました。

※下記のとおり、吉野鉄道は昭和3年に橿原神宮前(現在の同名の駅とは異なる)~久米寺~吉野間全通。

・吉野線

現在の吉野線は、吉野軽便鉄道により大正元(1912)年に吉野口~吉野(現在の六田)間が開通したことに始まります。翌年には社名を吉野鉄道に改めました。

大正12(1923)年には橿原神宮前(現在の同名の駅とは異なる)~吉野口間が開通しました。次いで昭和3(1928)年に吉野改め六田~吉野間が開通しました。

四神ライナーの料金・予約

・料金

四神ライナーは近鉄特急の一つです。近鉄は特急が全て有料で、普通運賃とは別で特急料金が必要です。あをによしは更に特別車両料金も必要でしたが、四神ライナーは普通席(レギュラーシート)の場合は不要で、デラックスシートの場合は必要です。

四神ライナーが走る阿部野橋~吉野間の特急料金・特別車両料金(デラックス料金)は四神ライナーに限らず、どの区間でも、大人1人あたり特急料金520円、特別車両料金210円です。つまり、普通運賃に520円(デラックスシートは730円)プラスするだけで、四神ライナー乗ることができます。

あをによしと違って、1人でも1人分の料金で乗車可能です(あをによしは、1人乗車の場合は子ども1人分の特急料金・特別車両料金が追加で必要)。

なお、特急料金は、橿原神宮前~吉野間のみの乗車で、かつインターネットで特急券購入の場合、吉野チケレス割が適用され、大人1人520円の特急料金が320円になります(令和8年11月6日時点)。4月1日~4月25日の間は割引対象外です。

・予約

あをによしの記事でも特急の予約(特急券購入)方法は書きましたが、改めて書いておきます。

近鉄特急の予約(特急券の購入)は、空席があれば当日乗る前でも可能です。阿部野橋~吉野間の特急は青の交響曲を除いて大体すいている(吉野があるので、桜の季節は混んでいるかもしれない)ので、当日買える可能性も高いです。事前購入は乗車1ヶ月前の日の午前10時30分からです。

後ほど紹介しますが、四神ライナー(さくらライナーも同じ)は4両(8両の場合もあるかもしれませんが、通常は4両)の内、3両がレギュラーシート、1両がデラックスシートです。なお、ひのとりやしまかぜと異なり、先頭車両の最前列は前面展望座席ではないので、御注意ください。ただ、前面展望は先頭車両の先頭デッキに行けば見ることができます(後述)。

四神とは?

ところで、四神(しじん)とは何なのか?この後の外観・内装でも出てくるので、先に少し説明したいと思います。

四神とは、玄武・青龍・白虎・朱雀のことを言います。キトラ古墳や高松塚古墳の壁画に描かれていることでも有名です(高松塚古墳は朱雀欠)。

玄武(キトラ古墳壁画体験館四神の館)
青龍(高松塚壁画館)
白虎(キトラ古墳壁画体験館四神の館)
朱雀(キトラ古墳壁画体験館四神の館)

玄武は亀と蛇が合体した姿をしています。青龍と白虎は形がほぼ同じで色が異なり、姿は龍に近いです。朱雀は鳥で、鳳凰のような感じです。

四神にはそれぞれ色や季節、地形といった属性があります。

四神についての詳細は次の記事で紹介していますので、よろしければご覧ください。

四神ライナーの外観・車内

では、四神ライナーの外観と車内を見ていきましょう。四神ライナーは阿部野橋側が1号車、吉野側が4号車となっています。以下の写真の内、外観写真は吉野駅で撮影したものです。

四神ライナーは「1300年以上の時がはぐくむ、「歴史」「不思議」「楽しみ」。知的好奇心をのせて走る、特急列車」とされています。

外観は、四神を1〜4号車に分け、天文図とともに大胆に配置し、飛鳥・藤原にまつわるテーマに沿った色彩や、様々なモチーフをあしらったデザインになっています。

また、外装にあしらった飛鳥・藤原のモチーフを内装にもデザインし、各車両のテーマに沿った四神が旅を彩る、特別な空間になっています。

その他、内装ではドア面や小天井に飛鳥・藤原にまつわる古墳や出土品のモチーフがちりばめられています。座席は枕カバーが車両ごとのテーマカラーになり、天文図と四神がデザインされています。

・1号車

1号車は「時を重ねた飛鳥のいま」がテーマになっています。外観・内装は黄土色がベースで、四神は朱雀です。外観には朱雀・天文図・大和三山・飛鳥の遺跡にある柱跡を示すもの等が描かれています。

内装はこんな感じです。描かれているのは外観と同様です。座席が元々ピンク色なので、黄土色ともあいまって、暖色系の車内です。

・2号車

2号車は「謎めく石物」がテーマになっています。外観・内装は青色がベースで、四神は青龍です。外観には青龍・天文図・酒船石・亀石・岩船等が描かれています。

内装はこんな感じです。ここも描かれているのは外観と同様です。座席のピンク色と青い枕カバーのコントラストが鮮やかです。

なお、2号車に描かれている飛鳥の石造物については以前に本ブログでも紹介していますので、ぜひご覧ください。

・3号車

3号車は「多彩な古墳」がテーマになっています。外観・内装は赤色(小豆色?マルーン?)がベースで、四神は白虎です。外観には白虎・天文図・石舞台古墳・牽牛子塚(けんごしづか)古墳等が描かれています。石舞台古墳や牽牛子塚古墳も、上記のブログ記事で紹介しています。

内装はこんな感じです。ここも描かれているのは外観と同様です。3号車のテーマの色は赤色(小豆色?マルーン?)で、元々の座席の色と似ています。このため、車内もテーマ色でまとめられている感じです。

3号車はデラックスシートになっており、普通車(レギュラーシート)とは異なり、座席が2列+1列で、座席や座席間隔はレギュラーシートよりも大きく広くなっています。

デラックスシートの追加料金は阿部野橋~吉野間の場合は僅か210円なので、安過ぎます。デラックスシートは他にもアーバンライナーや伊勢志摩ライナーにもあります。私は名阪運行のアーバンライナーに乗る機会が年に何回かありますが、大体デラックスシートに乗ります。

私は今回デラックスシートに乗りましたので、座席周りも少し紹介します。

座席は上の写真にも載せましたが、2列と1列です。1列席はもちろん隣に人が来ないのですが、2人席でも席の左右間隔が空いているので、隣の人と接触することなく、ゆったりと座れます。

枕は上下可動式で、クッション性があります。

背面テーブル・フック・網ポケットはレギュラーシートと同様です。

背面テーブルは横長で、缶やペットボトルを置く窪みもあります。また、ひじ掛けの中には小さいテーブルも収納されています。

足元にはフットレストがあります。新幹線グリーン車と同じく、床面と同じ色の面は靴のまま、シートと同じ色の面は靴を脱いで使用します。四神ライナー(さくらライナー)はレギュラーシートにもフットレストがあります。近鉄では他の特急でもレギュラーシートにフットレストがある車両が多いです。新幹線ではグリーン車だけなので、これは近鉄のすごさです。

ひじ掛けの内側にはコンセントもあります。

また、デラックスシート車両だからなのか、デッキ(2号車側)には飲料の自動販売機もあります。レギュラーシートの乗客でも自動販売機の利用は可能です。

・4号車

4号車は「飛鳥時代の栄華」がテーマになっています。外観・内装は紫色がベースで、四神は玄武です。外観には玄武・天文図・飛鳥大仏・高松塚古墳壁画の女子群像・厩戸皇子(聖徳太子)等が描かれています。

内装はこんな感じです。ここも描かれているのは外観と同様です。2号車と同じく、座席のピンク色と青紫色の枕カバーのコントラストが鮮やかです。

・展望デッキ

四神ライナー(さくらライナー)には展望デッキがあります。四神ライナーの展望デッキは四神バージョンに改装され、「大きな天文図と各車両の四神をあしらい まるで石室の中にいるような神秘的な空間」になっています。石室とは、古墳の中の、棺を安置する空間です(厳密には、棺を安置するのは玄室で、そこへつながる羨道(せんどう)と合わせて石室という)。

展望スペースは青い壁面に四神と天文図が描かれています。

展望スペースにはイスが設置されています。これも青色になっています。このシートはビスタカーの階下席と同じものが使用されています(色も同じ)。

この展望スペースからは前面展望がばっちり見えます。

・トイレ

四神ライナー(さくらライナー)には2種類のトイレがあります。1つは普通のトイレで、もう1つは多目的トイレです。

普通のトイレ
洗面所
多目的トイレ

四神ライナーの車窓(少し)

最後に、四神ライナーから見える車窓を少し紹介します。

・六田車庫

吉野線には橿原神宮前駅以外に電車の車庫が1ヶ所あります。それは六田(むだ)駅にある六田車庫です。阿部野橋駅から吉野駅へ向かう場合、六田駅を過ぎるとすぐ、左右に見えます。

ただ、小さな車庫なので、富吉や五位堂のような多くの電車を見ることはできません。

・吉野川

六田駅を過ぎて少しすると、(阿部野橋駅から吉野駅へ向かう場合)進行方向右側に吉野川が見えます。間に建物や木が入ることもあり、はっきり見える所は多くはありませんが、見続けているときれいに見える所もあります。

・吉野川橋梁

吉野駅に向かって、大和上市(やまとかみいち)駅を過ぎると、電車は右に90度カーブし、吉野川を渡ります。この吉野川橋梁を通る時、左右が絶景です。橋は長く、スピードも速くないので、ゆっくり見ることができます。

東側
西側

ここを過ぎると吉野神宮駅で、その次は終点吉野駅です。


以上が四神ライナーの紹介です。しまかぜやあをによしのような車内販売や豪華な座席は少ないかもしれません(いや、デラックスシートは結構良い)。でも、飛鳥・藤原バージョンにラッピング・改装され、乗っているだけで特別感があります。いつまで走るのかは未定ですが、ぜひ一度乗ってみてはいかがでしょうか。

※特に断りの無い限り、記事の内容は令和8年10月時点のものです。

《参考文献》

  • 『近畿日本鉄道100年のあゆみ』(近畿日本鉄道株式会社、2010年)
  • 近畿日本鉄道ホームページ(最終閲覧:令和8年11月6日)

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